ネットワークが遅いとは何を指しているのか?ハードウェア観点で解説

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概要

昨今、動画や画像の画質向上や、そもそもの Web コンテンツが肥大化するあまり、Web サイトの表示が遅い、ファイルのダウンロードに時間がかかりすぎる、といった声が大きくなっているように感じます。
快適なインターネット利用が当たり前になった現代において、このようなネットワークの遅さは大きなストレスの原因となります。その主な原因となっているのが、ネットワークのボトルネックです。

この記事では、ネットワークのボトルネックとは何か、ハードウェア観点で考えるボトルネックになる箇所を、初心者の方にも分かりやすく解説します。

よくネット上で、1.1.1.1 にすると、ゲームの応答速度が速くなるといわれていますが、それを解説した記事もございます。詳しくはこちら

ボトルネックとは

ボトルネックとは、文字通り「瓶の首」のことです。
中身がたくさん入っている瓶でも、出口である首の部分が細くなっているために、一度に流れ出る量を制限してしまいます。

ネットワークにおけるボトルネックもこれと同じ考え方です。データの通り道であるネットワーク経路のどこか一部に、通信速度や処理能力が極端に低い箇所が存在することで、全体の通信速度がその低い箇所に合わせて低下してしまう現象を指します。

例えば、最新の光回線を契約していても、使っている LAN ケーブルが古く、性能が低ければ、そこがボトルネックとなり、低速になります。

インターネットの通信速度の場合、最大通信速度が1Gbpsのインターネット回線を契約していても、設置している無線LANルーターの最大通信速度が54Mbpsだと、無線LANルーターからパソコンの間は、最大54Mbpsの通信速度となります。 このようなときは、無線LANルーターが【ボトルネック】になり、速度が遅くなっていると考えられます。

Q. ボトルネックって何ですか? - チエネッタ|NTT西日本 より引用
Q. ボトルネックって何ですか? – チエネッタ|NTT西日本 より引用
Q. ボトルネックって何ですか? – チエネッタ|NTT西日本

ネットワークを語る上で、Gbps とよく表記されますが、これは “ギガビットパーセカンド” と読み、1秒当たり何ビット ダウンロード・アップロードできるかを表記したものです。バイトではありません。換算すると、1バイト = 8ビット です。
つまり、1Gbps であれば、1000Mbps (1G=1000M) から 8 を割った 125MB (メガバイト) を1秒でダウンロードできる、を意味しています。

何処がボトルネックになっているかを知る

以下はよくある図で、これらに関係するところが1つでも遅くなっていれば、ネットワーク全体が遅くなるといわれる図です。
ルーターだけが早くても、そもそも契約する回線が早くないとダメ、ダウンロードする大元のサイトが速度制限をかけていたらダメ、LAN ケーブルが古くなっていてもダメ、そんなことがインターネット上には書かれています。

よくインターネットに記載されているネットワーク図
よくインターネットに記載されているネットワーク図

ですが、考慮するものはこれだけではありません。もう少し詳細にしてみましょう。
まだまだ考慮する必要もありますが、下図が基本かと思いますので、これで解説していきます。

詳細にしたネットワーク図
詳細にしたネットワーク図

※1 プロバイダー回線という言葉はなく、各々が独立した意味を持ちます。しかし昨今、回線業者・プロバイダーが一体型になっていることも多いので、それを称してプロバイダー回線と記載します。
※2 ルーターには ONU も記載しないといけませんが、一体として取り扱います。

PC (NIC) – HUB 間

PC (NIC) - HUB 間

PC には NIC (ネットワークインターフェースカード) と呼ばれているものがついており (ほとんどがマザーボード同梱)、皆さんが LAN ケーブルを PC に刺すものを指します。下図参照。

Micro-ATX H610
https://amzn.to/4lxu2Zr より引用

この NIC にももちろん良し悪しがあり、例えばこちらの Micro-ATX H610 ですと 1Gbps ですが、GIGABYTE B760 ですと 2.5 Gbps です。
BTO の PC ですと、1Gbps のマザーボードが組み込まれていることもあり、プロバイダーで 2.5 Gbps で契約して環境も整えているのに、1Gbps しか出ない、というのはこの NIC が原因です。

また、HUB も重要です。
戸建てにて、直接ルーターからは自部屋に伸ばせない (LAN 口の関係もあって) こともあるので、ルーターを1階、HUB を2階設置するパターンが多いと思います。
その際、2.5Gbps 契約しているにもかかわらず、HUB が 1Gbps までの対応となっていると HUB がボトルネックになり、最大通信速度は 1Gbps しか出ません。

また、マンションあるあるですが、マンションは LAN 口が各部屋にあり、壁裏に HUB (Switch) が設置されており、ルーターからマンション壁のメイン口に刺すと、ほかの部屋でも自契約した回線で通信することが可能です。
しかし、その壁裏にある HUB、LAN (後述) が 1Gbps だと、2.5Gbps 契約している環境では、最大通信速度は 1.0 Gbps になります

LAN とプロバイダー回線

LAN とプロバイダー回線

次は LAN とプロバイダー回線です。
LAN は、cat 5, 5e, 6 と様々ありますが、各規格によって、最大通信速度数が変わります。

カテゴリー最大通信速度
5100 Mbps
5e1 Gbps
61 Gbps
6A10 Gbps
710 Gbps
7A10 Gbps
840 Gbps

LAN ケーブルから、どのカテゴリーかを把握するには、ケーブルに印字されている文字を読み取ることで、確認が可能です。

LANケーブルのカテゴリ見分け方|サンワサプライ株式会社 より引用
LANケーブルのカテゴリ見分け方|サンワサプライ株式会社 より引用

例えば、PC ー HUB 間で カテゴリー 6 (1 Gbps) の LAN を使っているのに、HUB ー ルーター でカテゴリー 5 (100 Mbps) を使っている場合、最大通信速度は 100 Mbps となり、遅い方に合わせます。

そして、プロバイダー回線も重要です。
戸建てだと、ほとんどが 1Gbps のプロバイダー契約となりますが、マンションタイプの場合、オーナーが安くしようとして、「無料インターネット完備!」と記載されていたとします。ふたを開けたら 100Mbps の回線だった…ということもあります。また、2.5Gbps 契約している マンションタイプにも関わらず、自部屋まで伸ばす配線の LAN ケーブルが cat 5e だったなんてこともあります。 (実体験)

ルーター – インターネット間

ルーター - インターネット間

最後がルーター – インターネット間です。

まず、ルーターは自分自身で購入することも可能ですが、プロバイダーから提供されるルーターを使っている人がほとんどかと思います。
これひどい話がありまして、プロバイダーで契約している光回線の回線速度は、2.5Gbps にもかかわらず、ルーターは 1Gbps までしか対応していない、ということがあります。もしくはこちらは結構多いケースですが、ルーターの LAN 口は複数あるが、1口だけしか 2.5Gbps に対応していない、ということもあります。

XG-100NEseries_man_202311.pdf より引用
XG-100NEseries_man_202311.pdf より引用

上図がまさにそれですが、⑦のポートのみが 10Gbps 対応であり、⑥のポートは 1Gbps ということがあります。ですので、2.5Gbps 契約で複数の PC につなぎたい場合、⑦を使い、2.5Gbps 以上の HUB を使ってそこから PC へ這わせるということが正解になります。

また、インターネット上のサーバーにも速度は依存します。
例えば、1GB のソフトウェアを A サイトからダウンロードします。ただし A サイトは、ダウンロード速度の制限 (サーバースペック等にも依存) により、10MB/s (80Mbps) しか出ないサイト (サーバー) です。すると、いくら自環境の回線が 2.5Gbps でも、ダウンロードは 80Mbps で行います。
これはよくあり、Microsoft 社の ISO ファイルをダウンロードするときなど、これを特に実感します。

おまけ:Wi-Fi について

Wi-Fi を利用しているときも、規格の通信速度を理解しないといけません。
ルーターで利用できる Wi-Fi の規格が、IEEE802.11g 対応、IEEE802.11a 対応などによって、最大通信速度が変わります。詳細は以下の通りですが、理論値ですので、各社製品によって速度は下がったりします。

規格通信速度 (理論値)
IEEE 802.11n (Wi-Fi 4)600 Mbps
IEEE802.11ac (Wi-Fi 5)6.9 Gbps
IEEE802.11ax (Wi-Fi 6)9.6 Gbps
IEEE802.11ax (Wi-Fi 6E)9.6 Gbps
各規格における通信速度理論値

また、5GHz 帯と 2.4GHz 帯を理解しないといけません。Wi-Fi ルーターには、5GHz 帯と 2.4GHz 帯が備わっているものがあります。

例えばこちらの “TP-Link WiFi ルーター AX1800” ですと、5GHz 帯は 1204Mbps、2.4GHz 帯は 574Mbps までしか出ません。各ルーターによって、どの帯域が 5GHz / 2.4GHz かというのは記載されていますので、ご自身の利用メーカーの仕様書をご確認ください。

下図は参考程度に。

【わかりやすく解説】Wi-Fiの2.4GHzと5GHzって何が違うの? それぞれの違いを解説します! - チエネッタ|NTT西日本 より引用
【わかりやすく解説】Wi-Fiの2.4GHzと5GHzって何が違うの? それぞれの違いを解説します! – チエネッタ|NTT西日本 より引用

まとめ

以上より、以下項目が1つでも古い規格・遅い回線速度である場合、それがボトルネックになり、回線速度に影響がでます。

項目確認項目
PC1. NIC
HUB1. 自環境の HUB
2. マンションなどの場合、壁から出ている LAN 口
LAN1. HUB – PC 間の LAN 規格
2. HUB – ルーター間の LAN 規格
3. マンションなどの場合、壁に配線されている LAN 規格
プロバイダー1. 契約しているプロバイダー (100Mbps / 1Gbps / 10Gbps 等)
ルーター1. ルーターの対応速度
2. ルーターの利用した LAN 口
インターネット1. ダウンロードするサイト自体の最大通信速度
Wi-Fi1. Wi-Fi 規格
2. Wi-Fi の周波数 (2.4GHz / 5GHz)
3. ルーターから Wi-Fi 機に接続している場合、その間の LAN

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