概要
Windows には、どうしようもない最後の手段の際に [緊急の再起動] (英:Emergency restart) というものが搭載されています。しかし、Microsoft 社のドキュメントにもこの内容は記載されていないません。
そこで、本記事はこれはいったい何なのかを確認する記事です。
緊急の再起動とは
[緊急の再起動] とは、Ctrl + Alt + Del キーを同時押しした際に表示される電源ボタンマークを Ctrl キーを押しながらクリックすると、表示される画面です。
接続手順は以下の通り。
1.Ctrl + Alt + Del キーを同時押します。

2.右下の電源ボタンマークを Ctrl キーを押しながらクリックすると、以下画面が表示されます。

海外の Betanews では、PC の電源ボタンを長押しするか、この [緊急の再起動] を押すことは、PC を再起動する最後の手段として設計されている、と述べられています。
However, this is designed as a last resort method — an alternative to a hard reset which can be actioned by holding down the on/off switch on your PC or pressing the restart button.
How to access the hidden Emergency Restart option in Microsoft Windows – BetaNews
ZDnet 社では、利用は問題ないと述べられており、どうなのかを確認してみます。
この方法には特段の欠点は見当たらない。筆者はデスクトップPCや複数のノートPCで試してみたが、全て問題なく動作した。ただし、「最後の手段」とされているとはいえ、実際には何度使っても構わない。
「Windows」が動かないときの“最後の手段”–「Emergency Restart(緊急の再起動)」とは – ZDNET Japan
強制シャットダウンと緊急の再起動の比較
強制シャットダウン
実際に [緊急の再起動] を実施する前に、強制シャットダウンを確認します。
PC の電源を長押しし停止させるものはどうかを確認したところ、同様にイベント ID 6008 は表示されていました。

そして、重大レベルの ID 41 も併せて記録されていました。

これは Microsoft 社が記載しているように、しっかりと (?) 予期せぬシャットダウンとして扱われます。

予期しない再起動は、イベント ID 41 とイベント ID 6008 で示されます。
システム イベント ログを使用した予期しない再起動のトラブルシューティング – Windows Server | Microsoft Learn
緊急の再起動
さて、本題の 緊急の再起動 を実施します。
無事再起動が終わり、PC が起動したため、イベントビューアを確認したところ、システムのシャットダウンのエラーの旨 (イベント ID:6008) が表示されていました。
しかし、それ以外のエラーは見られませんでした。

これは、Microsoft 社が述べる予期せぬシャットダウンとは異なります。予期せぬシャットダウンは、上述通り、イベント ID 41 と 6008 が必要です。
ただこの再起動は、通常の再起動ではありません。なぜならイベント ID が 6009 のみしか記録されておらず、イベント ID 1074、13 が必要です。

通常の再起動を示す一般的なイベント ID は、イベント ID 1074 の後にイベント ID 13 とイベント ID 6009 が続きます。
システム イベント ログを使用した予期しない再起動のトラブルシューティング – Windows Server | Microsoft Learn
ですから、[緊急の再起動] は予期せぬシャットダウンほどではないが、通常再起動でもない、ということです。
緊急の再起動の動作は何か
※本情報は、Windows XP に合ったシャットダウンプロセスを基としたものですので、Windows 11 環境では異なる場合があります。あくまでも参考程度にしてください。
Windows XP では緊急の再起動というものが、隠されずに存在していました。
Windows XP では、シャットダウンプロセスにて、ドライバー、レジストリー、ディスクのキャッシュを削除、ページファイルのクリアなどを実行します。そして、シャットダウン後、NtShutdownSystemNtSetSystemPowerState という関数を呼び出します。
その後、別関数 NtSetSystemPowerState が呼び出されると、すべてのデバイス (キーボード、マウス、マザーボード、CPU など) がシャットダウンされ、システムが停止、電源オフ、再起動のいずれかを実施します。
しかし、[緊急の再起動]、[予期せぬシャットダウン] では、この2つの関数を呼び出さずに実行するため、システムが不安定になり、非常に危険であるとのことです。
Many of the Nt/Zw functions inside the Windows kernel are documented, but some are not. The NtShutdownSystem function is documented pretty well here at NTInternals. The NtSetSystemPowerState function, however, is not.
At the final stages of the Windows shutdown process, NtShutdownSystem is called. It is responsible for shutting down all drivers, flushing Registry hives and the disc cache, clearing the page file, etc. After doing so, it calls the NtSetSystemPowerState function.
NtSetSystemPowerState then causes all plug-and-play devices to be shut down and the system to be either halted, powered off, or rebooted.
However, calling these two functions without notifying the system first is extremely dangerous, and may cause instability in the system.
Performing emergency shutdowns – CodeProject
ですので、よほどのことがない限り (Ctrl + Alt + Del しか動かないなど) 、[緊急の再起動] はあまり実施しない方がいいと思います。
参考情報
Windows’ undocumented “Emergency restart”. : r/sysadmin
How to access the hidden Emergency Restart option in Microsoft Windows – BetaNews